2018年5月の経済産業省 特許庁による「デザイン経営宣言」から2年、2020年3月に「デザイン経営ハンドブック 」と「デザイン経営の課題と解決事例 」を発表しました。もちろんすでに読んでいる方々も多くいることと思いますので、中身に詳しく触れることは置いておきましょう。ここでは、デザインの価値について多かれ少なかれ理解があり、デザイン経営の導入を検討してみたいという企業において、果たして「デザイン経営は我が社に必要か?」を判断するためのひとつの尺度として「デザインラダー」を取り上げます。
「デザインラダー(Ladder=はしご、手段、段階)」とは、デンマークデザインセンターが2015年に発表し提唱している、企業におけるデザインの活用度を計るためのツールです。
“The Design Ladder”
https://danskdesigncenter.dk/en/design-ladder-four-steps-design-use
出典: Danish Design Centre
この中では、企業のデザインの活用度を極めてシンプルな4つのステップに区別しています。
◇ステップ1「デザインの活用なし」
◇ステップ2「見た目としてのデザイン」
◇ステップ3「プロセスとしてのデザイン」
◇ステップ4「戦略としてのデザイン」
このツールをもって冒頭の「デザイン経営は我が社に必要か?」の判断はどのようにするのでしょうか?その答えはとても簡単です。ステップごとにみてゆきましょう。
◆ステップ1「デザインの活用なし」の企業に、デザイン経営は必要か?
【答え】必要。可能性は無限大です。
ただし、経営者に理解がない場合にはデザイン経営導入の余地なし。「経営」というワードが入っている以上は当然のことですね。導入を試みる担当者は経済産業省 特許庁の資料を駆使して、経営者に承諾を得ることから始めてはいかがでしょうか。
◆ステップ2「見た目のとしてのデザイン」活用の企業に、デザイン経営は必要か?
【答え】必要。デザインは見た目だけではありません。
デザインの一要素として見た目は非常に大切ですが、その背景にある意味や理由こそデザインの価値を伝えるものです。見た目のデザインの好き嫌いからの脱却をするためにもデザイン経営が必要です。
◆ステップ3「プロセスとしてのデザイン」活用の企業に、デザイン経営は必要か?
【答え】必要。さらに理想形を目指しましょう。
プロセスの初期段階からデザイン的思考を取り入れた開発が出来ているということは、すでにデザイン経営にリーチしていると言えるかもしれません。しかしながら、デザイン経営の本質はイノベーション力とブランド力です。そのためにもさらなるデザイン経営の活用が必要です。
◆ステップ4「戦略としてのデザイン」活用企業に、デザイン経営は必要か?
【答え】必要。更新し続けることに価値があります。
すでにデザイン経営企業です。経営者直轄のデザイン部門にデザイン責任者がおり、すべての事業部署を統括している状態であればデザイン経営の理想形です。イノベーション力とブランド力を更新し続けるためにも、引き続きデザイン経営を活用する必要があります。
結論。
どのステップにおいても、デザイン経営が必要というのがここでの答えです。しかしながら、経営者がその価値を見出すことなければ全く意味をなしません。ご自身が経営者でなければ、経営者を巻き込むか、それができなければデザイン経営をあきらめましょう。
また、このツールにおけるステップは企業の現在地を把握するためのものであって、一段ずつ上がるためのステップではないと考えています。現在ステップ1であろうと一気にステップ4の理想形を目指すのがデザイン経営です。言うまでもなく、ステップ3は2を、ステップ4は2と3を内包しています。
私たちは企業価値のポテンシャルを上げる「デザイン経営」を日本企業の99.7%を占める中小企業に活用してもらうべく、いくつかのアプローチでハードルを下げる試みをしてゆきます。この記事に続き、今後もデザイン経営のコラムを配信できればと思います。
P.K.G.Tokyo ディレクター 天野和俊