P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

REPORT

包むー日本の伝統パッケージ 目黒区美術館

戦前からアートディレクターとして活躍する一方で、
自然の素材が生かされたパッケージに魅了され、収集を続けた岡秀行さんのコレクションを
集めた展示「包むー日本の伝統パッケージ」。目黒区美術館を訪れました。

館内は「木」「竹」「笹」「藁」「土」「紙」と素材別に分けられており、
それぞれの素材を生かしたパッケージが展示されています。

左 ささらあめ:宮城県/熊谷屋
中央 濱焼桜鯛:岡山県/株式会社 鯛惣
右 岡山獅子:岡山県/中尾正栄堂

ささらあめ
ひご竹の先に小さなさらしあめをつけ、それを竹筒に差し込んだシンプルな形状。
素材の特性を生かした放射状に広がるかたちは見た目にもとても面白く、可愛らしさもあります。
残念ながら現在は作られていないとのこと。竹ひごに飴を付けるのが難しそうですね…
濱焼桜鯛
竹皮で編んだ菅笠を二つ折りにした形。風通しがよく、運搬し、一時保持するために機能的な形状。

左 釣瓶酢:奈良県/釣瓶酢弥助
中央左 おひねり
中央右 真盛豆<利休井筒>京都府/金谷正廣
右 鬼づら 香川県

おひねり
おひねり、はまさに「チップ」のこと。一見お菓子が入っているのかと思いきや、お金でした。
例え、とっさのことでもむき出しを嫌う日本人的感覚の所産。
包むという面白さ、さっとした所作から生まれる紙の大胆な美しさに目を奪われました。

どのパッケージデザインも現代では私たちがなかなか目にすることの無いものが多い印象でした。
現代では量産にはなかなか向かない形状、またパッケージ費用を考えると製造は困難と感じるものも。
しかし素材の特性や形状を大胆に生かしたり、細密さに富んだデザインは非常に新鮮です。
特に竹や藁などを使ったパッケージでは、様々な編み方で異なる形状を作りだしたものが多く、
素材を無駄にせずいかに機能的に作り上げるかという作り手の考えを感じました。
よく一つの素材で、ここまで考えられるのかと驚かされます。

展示のなかで、岡さんの言葉が印象的でした。

ー豊かな暮らし、豊かな社会というそれまで一度も疑われようとしなかった大きな目標が
いったい本当に正しいのかどうか、密かな疑問が生まれつつある。
伝統パッケージを単なる古き良き自体の記念碑に終わらせてはならないであろう。
人間のこころそのものに光を当てた新しい価値観が来るべき時代の方向を決することは疑いを入れない。ー

目まぐるしく変化していく時代のなかでのパッケージデザインの在り方とは何なのか、
もう一度立ち返らなければならないのかもしれません。展示を通し、改めて考える機会となりました。
今回の写真以外にも、非常にたくさんのパッケージコレクションが展示されており、
とても楽しかったです。是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

-包む 日本の伝統パッケージ
7/13(火)-9/5(日)まで 目黒区美術館
午前10時-午後6時(入館は午後5時30分まで)

P.K.G.Tokyo
大西あゆみ


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