「包む」生命の本質
私がパッケージデザインの道を選んだのは、先生が書いた一つの詩が大きなきっかけでした。
「包まれること」
地球に生きてる僕たちは
大気の中で包まれて生きている。
生命はすべて包まれた存在だ。
母親のお腹に宿った生命は
やさしく包まれて生まれてくる。
包むことは生命のすべてにおいて必要なこと。
パッケージデザインとは生命かな。
そして
外見も生きた表現にするコトが
大切なんだよ。
この詩は授業でパッケージデザインを紹介する時に見せてくれたものです。読む度に自分の専門に対する誇りと哲学的思考を与えてくれ、長い間自分のノートに残っていることで励みになっています。
パッケージは、単に物理的な保護や流通の便を提供するものだけではありません。「包む」ことが、生命の営みを象徴する行為であり、生物の進化や希望、生存を支える根源的な役割を果たしているということに、気づくことができました。まるで母親が子を包み込む愛情のように、パッケージが中にある価値を優しく保護しつつ、未来の希望をつないていく二つの視点を捉えていると思います。
そして、日本は「包む」ことが好きです。贈り物を包む、食べ物を包む、お金を包む、言葉を包むなど、日常に包む美学が溢れています。たとえば一枚の白い紙を使って折形礼法で贈り物に気持ちや自分の行動に形を与えています。そこには贈る相手を大切に思う気持ちや心そのものを守る想いなどが込められています。このような背景から「包む」という行為には精神的な豊かさが宿っていると思います。
一方でパッケージの役割は現代の消費社会の中で再定義されつつあります。環境問題が叫ばれる今、持続可能性を追求したデザインは「包む」そのものが生命を尊重する行為であることを再認識しました。素材や形状だけでなく、リサイクル可能な設計や廃棄後の未来まで考えることが今のパッケージデザインにとって不可欠になっているのです。
パッケージが物理的な役割を超えて、命の象徴として位置付けられることで、その存在がさらに深まっています。「包む」という行為が生命の保護、共有、そして次世代への希望を示しており、私たちの仕事が未来へつながる道を包むことでもあります。今日も、デザインに向き合うとき、先生が教えてくれた「包む」という行為の本質を思い出しました。それは、生命や文化、人々の心を結ぶ行為であり、私にとって生涯をかけるに値する挑戦だと感じています。
参照サイト
機関誌『水の文化』41号 和紙の表情
https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no41/07.html
P.K.G.Tokyo 朱 贇