パッケージデザインの魅力
パッケージの定義と発展
J.H. Briston, T.J. Neillの書籍『Packaging management』によると、パッケージの定義は輸送と販売のためのアート、サイエンス、テクノロジーだそうです。Bill Stewartは費用対効果、保護、識別がパッケージの重要な役割であると主張しています。Gavin Ambrose, Paul Harrisの『Packaging the Brand』では商品を保護すること、コストへの貢献、商品の属性および良さを促進すること、販売と最終消費の場においての補助表示”の4つにわけてパッケージデザインを考察しています。美術評論家の中山公男は『日本のパッケージデザイン その歩み・その表情』の中で、パッケージの機能は梱包・輸送、保存・防腐、形のないものに形をあたえる(例えば液体はそれ自体では持ち運べない)、それ自体で自立しうるもの、全体的なものでなければならない(大きな原型では建築、小さなものでは駅弁)と述べています。
Marianne R. Klimchuk とSandra A. Krasovecの『Packaging Design: Successful Product Branding from Concept to Shelf』によると、パッケージが始まったのは紀元前8000年の始め、中身の鮮度を保つためだったそうです。その後産業革命を経て大量消費とともに重要性を増し、1940年代のスーパーマーケットに代表されるセルフ・サービス店の成長においては商品の視認性と販売促進を担うようになっていきました。
日本とパッケージ
日本は包むということについてとても繊細な国だと思います。イギリスに留学していた時、スーパーで卵を買う時は必ず紙でできたパッケージを開けて確認する必要がありました。中で割れていることが多いからです。日本では包装されているべきものが開けられている状況なんてまず見たことがないと思うのですが、イギリスではおしゃれなデザインの紅茶パッケージの角が折れてぐちゃっと開いていることも当たり前でした。ギフトに手袋を買っても日本の百貨店では紙箱に包装紙&リボンまでかけたあと紙袋(しかも持ち帰る用と渡す用の2枚)を貰えるのに対し、ロンドンのデパートでは商品を白い薄紙に巻いた後は直接紙袋に入れていました。外国に行ってお土産を買う際に、いかに日本でパッケージが大切に扱われているか再認識する方も多いのではないでしょうか。
パッケージデザインは夢
パッケージは主に捨てられるものなので資源や労力を無駄に使うべきではないという考え方も正論だと思います。今後ますます地球環境を無視した経済活動は行えなくなるし、なるべくシンプルに商品を伝えたいと考える方もいらっしゃるでしょう。一方で中山公男は次のようにも主張しています。「人は呪術的な機能で、物が、気分が、日常生活が一変することをよろこぶ、要するに夢を買おうとし、贈ろうとする。パッケージデザイナーたちの創造は脱がされ捨てられるためであり、その夭折の哲学をつくることが宿命的な仕事だろう。」パッケージデザインは中身が取り出されたその後は無駄なものになってしまうのかもしれない。だがそれでいて人に夢を与えるというロマンも担っている。まるで打ち上げられ人の目を楽しませた後は塵となる花火のようです。その一瞬の喜びを提供できることがパッケージデザインの魅力なのかなと個人的には考えています。
P.K.G.Tokyo :中澤亜衣