P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

「三方よし」から考える、現代ビジネスのブランディング

◉日本経済に大きな影響を与えた「三方よし」

大阪商人・伊勢商人と並び、日本三大商人として名高い近江商人は江戸時代、現在の滋賀県を拠点に天秤棒一本から財をなし「近江の千両天秤」と呼ばれるほど活躍していました。近江の商人たちは商いにおける独自の行動哲学を大切にしており、その考え方を後世に伝えるものとして「三方よし(さんぽうよし)」という言葉があります。

三方とは、企業に関わる「売り手」「買い手」「世間」の3つを表しており、
「売り手」である自社だけが儲かって喜んでいてはいけない。
「買い手」である顧客にも使われ、喜んでもらえるものでなければならない。
そして、一番重要なのは、自社と顧客だけでなく、「世間」も喜んでくれなければいけない。
この三者が喜ぶような商売をしないと、ビジネスは長続きせず、さらに繁栄し続けることは出来ないという事を示している言葉です。

「三方よし」は伊藤忠商事、住友財閥、高島屋など、日本を代表する企業の社是となっており、各社の功績からもこの指針が日本経済の発展に与えた影響の大きさが伺えます。また、創業100年以上の長寿企業ランキングにおいて、日本企業は約37,000社以上と米国の約21,000社を抑え、世界一を誇ります。(数値は2020年時点)
日本に長寿企業が多い理由として、江戸時代に各商店(企業)が導き出した経営手法を、近代まで代々継承し、持続させようとした試みが大きいとされています。継承していく象徴の表現として、暖簾や家紋というデザインが使用されました。
会社の存在する意義・姿勢を、社内外問わず、広く世間に対して示すこと。
自社独自の経営方法を築き上げ、時代に合わせて変化させながら、代々継承していくこと。
この考え方は現代の「ブランディング」に通ずるのではないでしょうか。
「三方よし」と現代の企業ブランディングとの関連性をもう少し掘り下げてみましょう。

 

 

◉「三方よし」をブランディング視点で考える

◎売り手よし
これは自社の上げる売上・収益の増加といった利益的な側面はもちろんのことですが、ここで注目したいのは従業者の満足度の高さについてです。
従業者それぞれが自分の行っている仕事に誇りを持てているのか、その労働に見合った満足な対価を得られているのか。対価とは金銭はもちろんのこと、対人関係や社内環境、仕事を通じて得られる達成感など心理的で把握しづらい価値も存在し、経営者は社内の人数によらず、それらの意識をコントロールすることが必要となります。
これらを叶えるために有効な手段として、インナーブランディングという考え方があります。
インナーブランディングは、従業者に対して企業の理念やビジョン、価値観を共有し理解を深め、共感や愛着心を持って行動してもらうための活動です。従業者が自社やブランドへ愛着を持つことは企業への満足度やモチベーションを高め、離職率の低下・ブランドのイメージアップ・優秀な人材の確保・生産性の向上などにつながります。

インナーブランディングの成功例として名高い、東京ディズニーリゾート。従業者はディズニー・ユニバーシティ・プログラムという研修を入社後も定期的に受けるのだが、その内容は業務のオペレーションやマニュアルに関することと合わせて、創設者であるウォルト・ディズニーが掲げた行動基準を徹底的にレクチャーされる。共通の価値観の伝達によって、従業者が目指すべき行動が共有され、一人ひとりが自発的にブランドを体現したパフォーマンスを行い、満足度の高い顧客体験を生み出す。

 

◎買い手よし
企業が生み出すものはもちろん顧客を満足させるものでなくてはなりません。その満足を生み出すために考えられるタッチポイントは、大きく2つ挙げられます。
まず、自社の提供する商品を通じたコミュニケーションです。商品ブランディングには、製品品質の高さ・ネーミング・コンセプト・パッケージデザイン・CM制作・web制作などなど、様々な要素から成り立っています。
もう一方で私が重要と考えるのが、従業者の対人パフォーマンスです。顧客がその商品を購入する際、売り手である従業者から受けるイメージや態度一つが会社への印象・イメージを作り上げていきます。
従業者の対人スキルをマネジメントすることは、顧客の満足度をより高める要因として機能するのではないでしょうか。

第3の場所を売ることをコンセプトに掲げているスターバックスコーヒー。職場・家庭とは異なるリラックスタイムをもたらす空間作りを運営するため、従業者は80時間の研修を受けることが必須となっている。しかし、その中には接客マニュアルは含まれておらず、具体的にどう行動するべきかを本人が考えなければならない。各人が職場で自分らしさを発揮できる風土が、他のチェーン系飲食店よりもスタッフ定着率や復職率が高い要因となっていると考えられる。

 

◎世間よし
ここで表されている世間とは、地域社会やコミュニティ、地球環境など、企業を取り巻く環境を表します。
社会や時代が求めているテーマは時代によって移ろいゆき、現在ではSDGs(持続可能な社会の実現)やESG(環境・社会・ガバナンス)などの社会課題が一般的に注目されていますが、会社の規模や指針に応じて、対応するテーマは異なリます。
環境問題のような大きな課題だけではなく、地域社会との関わり、身の回りの小さなコミュニティ1つ取っても重要なテーマとなり得ます。
自社が苦境に立たされているとき、手を取って応援してくれる人がどれだけいるのかが、その会社の普段の行い、社会貢献度の写し鏡ともいえるのではないでしょうか。
企業の長期存続・繁栄のためには、世間よしの視点は必須と考えます。

ペットボトルのリサイクル活動の啓蒙など、環境問題というテーマに重きをおいて様々な発信をしているSUNTORY。近年、商品宣伝だけではなく、ペットボトルのラベルを剥がすことの重要性を訴える企業広告をTV等にて放映している。CM内の「サントリーのじゃなくてもね」というセリフに企業の矜持としている姿勢を感じる。

参考
企業広告「#素晴らしい過去になろう ペットボトルでまた会おう」篇 60秒 サントリー
https://www.youtube.com/watch?v=rsQeKctTb-w

 

 

◉現代ビジネスと「三方よし」

今回注目した三方よしの考え方は、社会とのつながりを見据え、多くの人と手を取り共生しながら広く長く繁栄していくビジネススタイルの提案とも捉えられます。

多様性という考え方が広く一般化した現代ビジネス社会では、個人に対する選択肢や裁量度が大幅に増加しています。個にフォーカスした、より専門的で複雑なビジネス体系が社会の一翼を担っていく中で、経営の核となる姿勢を示した指針を立てることは、社会に対する存在意義を表し企業の強みとなるのではないでしょうか。
そしてその強みを社内外や世間へ伝達するために、デザインを利用することは強力な手法の一つです。
自社の存在意義を明確にすること・自社のブランディングを進めること・社内外に対してデザインを用いて伝達することは、それぞれが独立した要件ではなく全てがシームレスにつながって成り立っていると私は考えます。
そのため、一つの要件について考えるということは、他の要件のことも同じように考慮しどのように影響を及ぼしあっているのか慎重に検討することが必要です。

理論と表現、そして「利益や理屈だけでは表せない人情のようなもの」を少しのエッセンスとしてかけ合わせることで、様々な人に長く愛され繁栄していく組織の土台となり、それらを変化・持続させていくことは自社ブランドの独自性を高めることに繋がっていきます。
この考え方は組織に対してだけではなく、分野を問わず、個人個人の仕事に対する姿勢にも通ずる普遍性を秘めていると感じています。

 

P.K.G.Tokyo 稲田 拓真

COLUMN

アルゴリズムが奪うものとは 〜ブランディングはどう進化すべきか〜

2024.11.27

現代社会では、私たちの生活はアルゴリズムに大きな影響を受けています。日々のニュース、音楽のプレイリスト、ショッピングのおすすめに至るまで、個々の嗜好(しこう)に合わせた情報が提示されています。パーソナライズによって、かつてのように誰もが「好き」と思える共通の価値観は薄れ、個々人が独自の価値基準を持つようになりました。アルゴリズムは私たちが大量の情報の中から「好き」なものを効率よく選択するのを助けてくれます。その一方で、新しい価値観や予想し得ない出会いの機会を喪失させ、私たちの視野を少しずつ狭めているようにも感じます。消費者とのコミュニケーションの在り方が変容していく中で、ブランディングに求められることとは一体どのようなことなのでしょうか。

昨今、消費者の購買データや行動履歴から嗜好(しこう)を把握し、それに応じた商品や広告施策を作り出すことで顧客満足度を高めていくデータドリブンマーケティングが主流となっています。データの裏付けはリスクを回避し、投資判断を後押ししてくれますが、画一化したアプローチに陥りやすくなります。似たようなデータを基にした広告やキャンペーンが増えることで、市場全体が同じ方向に流れ、差別化が難しくなるのです。その結果、ブランドが持つ本来の個性や独自のメッセージを薄れさせ、短期的なニーズに応えるだけの消費される存在になりかねません。データを重視した合理的なマーケティングは、全てを説明しきり、ブランドについて「語る余地」や「考える余地」を失わせてしまう可能性をはらんでいると感じます。

とはいえ知らない商品やサービスを購入することはできません。データドリブンなマーケティング手法は認知を得るには有用です。しかし、ブランドが本当に長く愛される存在となるためには効率的なアプローチだけでは不十分です。ここで重要なのはスローな視点 ―すなわち、時間をかけて築き上げる信頼やストーリー、そして情緒的なつながりではないでしょうか。一時的な流行に乗って話題を呼んでもすぐに消えてしまうブランドが多い中で、歴史やカルチャーと強く結びつき愛されるブランドは、ブランド自体が一種の「カルチャー」や「アイデンティティ」として機能しています。

たとえば、アメリカ発のブルーボトルコーヒーは日本の喫茶店カルチャーからインスパイアを受けた「サードウェーブコーヒー」というムーブメントをけん引しながら日本へ上陸しました。 “おいしいコーヒー体験は、人生をより美しくする” という考えの基、コミュニティを大切にした独自のブランディングを展開しています。日本から撤退する海外ブランドが後を立たない中で、9年間で25店舗というスローペースで着実に店舗数を拡大しています。

データに頼る画一的なアプローチだけでは、消費者が本当に共感できる「ストーリー」や「体験」を生み出すことは難しくなりつつあります。時間をかけて培われた歴史やカルチャー、そしてブランドが掲げるアイデンティティを軸に、消費者と深い信頼関係を築くことがますます重要になるはずです。これからの時代に求められるのは、短期的な成果に固執するのではなく、長期的なブランド価値を持続的に高めていく視点なのではないでしょうか。ブランドは消費者に「選ばれる」存在ではなく、「共感され、長く愛される」存在であるべきなのかもしれません。

参考:Coffee in Nature|BLUE BOTTLE COFFEE https://store.bluebottlecoffee.jp/pages/coffee-in-nature

P.K.G.Tokyo 深津 貴史

COLUMN

SNSの「パケ買い」からみる大量生産品のパッケージデザイン

“パッケージデザインという分野においては、これを専門とするデザイナーがいるはずだが、歴史を振り返ってみても、グラフィックデザイナーとして多彩な仕事をしてきた者の多くはこれまで、大量生産品の「デザイン」を、むしろタブー視していたのではなかったか。それらはまともに議論するにあたわない、猥雑なものであると見放してきたのではないだろうか。ところが現実は異なる。私たちはどんなに著名なデザイナーが手がけたグラフィックやプロダクトよりもずっと身近に大量生産品を感じ、日々それらを使い、暮らしている。つまりデザイナーがそれら大量生産品から目を逸らすことは、暮らしそのものから目を逸らすことと同義とも言えよう。”

出典:佐藤 卓.「大量生産品のデザイン論 経済と文化を分けない思考」(2018.01).株式会社PHP研究所,P.12

 

「パケ買い」という言葉が大量生産品にも使われる姿を、SNSで見かけるようになりました。実際に企業側も「パケ買い」を意識したであろう打ち出し方をしている商品も見かけます。それほどまでにSNSが持つ効力が無視できないフェーズに突入しているということだと思います。

レコードやCD、書籍などの、ストーリーや情緒が重視される商品に使われる「ジャケ買い」は聞き慣れた言葉です。佐藤卓著の「大量生産品のデザイン論」引用にもみられるように、スーパーやコンビニに並ぶ大量生産品のパッケージデザインはいわゆる「デザイン」の成果物として認識されることが少なかった、あるいは今も少ないように思います。グラフィックとしての美的価値への探求よりも、商品の情報伝達が優先されることによって、デザイナーの作品としての掲示が少ないことも理由の一つです。パッケージデザインは、商品としての「中身」が存在し、それらを「梱包」するプロダクト的な役割と「情報伝達」するグラフィック的な役割を担っています。商品の中身とパッケージデザインが持つ情報がノイズなく伝わることにより「商品自身」がフォーカスされ「パッケージデザイン」自体へ意識が割かれないことも理由に挙がるかもしれません。

スマートフォンの普及とともに、SNSも急速に進化を遂げました。一個人が世界中に向けて情報を発信することが容易になったととも言えます。「パケ買い」という言葉とともにSNSに投稿される商品をみると、パッケージデザインとしての役割と責任の範囲がより広がったと感じます。

パッケージデザインには「美味しそう」、「便利そう」、「効きそう」、「面白そう」などなど、消費者の方に手に取っていただけるように様々な情報がメッセージとしてこめられています。「パケ買い」という言葉には、そんなあれこれを飛び越えてパッケージのビジュアルが気に入ったので購入したというフィーリングを感じます。SNSを通じて「パケ買い」のタグを投稿することは、購入いただいた消費者からさらに第三者へ己の持っている審美眼や、価値観を共有するような意味を持っているように思います。元々は装飾品などに求められていたような、より良い見た目への審美眼がじわじわと大量生産品にも降りてきているような感覚があります。

SNSへの投稿のための購買は、中身の本質と離れたところに価値を見出してしまう懸念があります。ただ、根本の思いは自分の「好き」を人と共有したいという想いではないかと私は思います。「好き」に選んでもらえることは、デザインを制作している側としてもとても喜ばしいことです。商品自身が持つ良さを情報として伝えるとともに、消費者の審美眼にも訴えかけられるデザインを両立したアウトプットで 「好き」を勝ち取っていけることが、商品にとっても消費者にとってもベストな道だといえます。

SNSで見栄えするパッケージが必ずしも店頭で映えるパッケージとはイコールではないのが難しいところです。コンビニやスーパー、ドラッグストアでは各社がそれぞれ販売戦略を持って、様々なアプローチで演出した商品が一同にずらっと並びます。トーン&マナーが統一された専門店と前述したようないわゆる大量生産品を比べると、商品パッケージの顔つきは大きく変わります。

「パケ買い」を意識したパッケージデザインを作り上げるには あくまで商品棚での苛烈な競争に打ち勝った上で、SNSでの情緒的な見た目の演出も兼ねなければなりません。SNSで目立つことが先行してしまい、肝心の商品を置いてきぼりにするようなデザインでは 一過性の売り上げは見込めたとしても長く愛される商品に育てていくのは難しいと思います。その匙加減の調整にプロとしての技量を問われていくことになるのだと思います。

私たちの仕事は、デザインを通じて一人でも多くの方に、一つでも多くの商品を選び取っていただくことです。一つ一つの商品が、企画開発や流通、品質管理などたくさんの工程と苦労をへて生まれます。最後の顔となるパッケージを託されることは、大きな責任が伴います。

SNSの台頭に限らず、デザインに求められることは 時代の移り変わりとともに変遷していく部分があると思います。新しい価値観へのアンテナを持ち続け、企業、商品、消費者に寄り添ったデザインを常に更新していきたいと思います。

 

P.K.G.Tokyo  白井 絢奈

COLUMN

漢字の国の、漢字のデザイン。

2024.07.26


漢字はやっぱり難しい。

これまでいくつのロゴタイプを制作してきたでしょうか。世に出なかったものやプライベートな作品も合わせると、かなりの数の書体を制作してきたように思います。そしてたくさんのロゴタイプを手掛けてみて感じることのひとつには日本語のロゴタイプ、とりわけ漢字のロゴタイプはとても奥が深いということです。多くの画数を持つ漢字の制作は、アルファベットよりも圧倒的に手がかかります。アルファベットの大文字は元々、石に刻む目的をルーツに持つものなので構造も直線的でシンプル。さらに文字の種類と画数が少ないので、タイプフェイスがもとより図形的でマーク化しやすいのです。それは小文字であっても基本的には同じで、曲線が増えることでの難しさはありますが図形としての明快さは変わりません。一方、漢字はというと文字の種類と画数が多く複雑なことに加え、止めや跳ね、払いなど、いわゆる永字八法と言われる一筆ごとの表情も多彩です。そのほかにも例えば楷書と隷書では基本的なシェイプが違うことに加え、筆使いも変化しその結果生まれる形状が書体のセリフ(飾り)に影響したりします。そういった漢字のつくりやルーツを調べていくと、そのひとつひとつが深く形に影響を及ぼしていることがわかり、漢字をロゴタイプとして仕上げていくには、技術と同時に知識が必要なことにも気付かされます。そして母国語であることも、そのハードルをさらに上げる要因です。私たちが日常的に書いたり見たりする文字だからこそ、誰しもが微妙な配置のズレや間隔の広狭など、ちょっとした変化も違和感として感じ取れてしまうからです。

漢字の国のためにつくった漢字のデザイン。

さて少し話は変わりますが、P.K.G.Tokyoでは中国で発売される商品のデザインもしています。ミネラルウォーターで有名な中国の大手飲料メーカー、農夫山泉から発売されている「农夫果园」というフレッシュジュースです。中国を代表する企業の流通網はとても広域で、中国のどこでもその商品を見つけることができます。当然ながら「农夫果园」のロゴタイプも中国語。つまりは「漢字」です。このロゴタイプの制作に着手する際、なんというか感慨深いものを感じました。漢字の生まれた国のロゴタイプを日本人の私がデザインするということは、文化的な回帰であるのだと。どこか恩返しのような、それでいて里帰りのような気持ちです。漢字の歴史3300年へのリスペクトも相まり普段使い慣れた文字でありながら、漢字を使うことに対してのある種の責任のようなものも感じました。中国と日本のみが使う漢字という文化。両国それぞれに醸成された文化への尊重。そういった思いを意識せずにはいられないお仕事でした。漢字は日本でも使う文字とは言え、「农夫果园」という4字には日本の常用漢字には含まれないふたつの文字があります。农(農)と园(園)です。どちらも難しい漢字ではないですが、これまでに書いたことのない文字。まずは手書きでの練習です。「『衣』の筆運びにも似ているが、どこかバランスが違う気もする…」そんな微調整を繰り返えし、ようやく完成したのがこのロゴタイプです。

「农夫果园」のロゴタイプは緑葉のシルエットを持ったロゴタイプです。ビビットでカラフルなパッケージデザインに映えるグリーンリーフによって、ボトル自体がひとつの果実のような存在に感じ取れます。よりフレッシュに、より若々しく。しかし、これまでのファンを裏切らない安心感のあるデザインに仕上がりました。日本人の持つ繊細な感覚を通して、漢字を使う国から漢字の生まれた国への文化的な恩返し。そして国籍を問わない普遍的なデザインによって、共感できる価値の提供をする。そんな思いを込めたデザインです。

P.K.G.Tokyo ディレクター 柚山哲平

 


汉字之国、汉字设计

汉字设计果然是很难。

到目前为止,我已经制作了多少种徽标呢?如果把那些没有公开的作品和私人作品也一起算上,我想我制作的数量还是相当可观的。通过大量的徽标设计,我深刻体会到日文字体设计,尤其是其中汉字的部分是非常深奥的。制作笔画众多的汉字字体,比起西文字母要耗费更多的精力。西文的大写字母为了雕刻在石头上,其结构直线且简单。再加上字母种类和笔画较少,因此字母本身图形化、标记化较为容易实现。这点在小写字母上也基本相同,尽管曲线增多带来了一些难度,但作为图形平明易解的特性并未改变。

另一方面,汉字种类多、笔画复杂,此外还有所谓的“永字八法”——如停顿、跳跃、挥洒等笔法的多样性。此外,不同书体如楷书和隶书,不仅基本形状不同,笔法也有所变化,结果导致字体的装饰(衬线)也受到影响。通过研究汉字的构造和起源,可以发现每个细节都会深刻影响其形状,要将汉字作为徽标设计完成,除了技术之外,还需要丰富的知识。此外,使用汉字作为母语的身份也进一步提高了设计难度。正因为我们日常书写和观看这些文字,任何人都能敏感地察觉到细微的排列偏差或间距变化,并可能会感到不适。

 

为汉字之国设计汉字。

话题稍微转换一下,P.K.G.Tokyo也为中国市场的产品进行设计。比如由中国著名饮用水企业农夫山泉推出的“农夫果园”混合果汁。作为中国代表性企业之一,其销售网络遍布全国,在全国各地都能找到这个产品。理所当然“农夫果园”的徽标就是用中文,也就是汉字。当我开始着手设计这个徽标时,心情颇为复杂。作为一名日本人,设计汉字起源地的标志,这是一种文化的回归。感觉像是在回馈,又像是在探访远房亲戚一般。处于对历史悠久的汉字的尊重,让我在使用这些平时都习惯了的文字进行设计时,感受到了一种责任感。现今汉字主要在中日两国使用,应当对两国各自孕育出的文明都要保持敬意。这份工作不经意间让我无法不去思考这些。此次徽标设计,汉字虽说在日本也使用,但“农夫果园”这四个字中有两个汉字并不属于日本的常用汉字,即“农”和“园”。这两个字不算难,但我也从未写过。首先先从手写练习开始吧,“这个笔画有点像‘衣’,但感觉某些地方的平衡有点不同……”就这样经过反复微调,终于完成了这个徽标设计。

“农夫果园”的徽标是一片绿叶的剪影。这一片色彩鲜明的绿叶,与饮料瓶的包装设计相得益彰,让整个瓶子正好看起来像一颗新鲜的果实。整体设计更加清新、年轻,同时也保留了让老顾客安心的熟悉感。通过日本人特有的细腻感受,以使用的汉字为媒介,实现了对汉字起源地的文化回馈。并通过超越国籍的普遍设计,提供一种能够引起共鸣的价值。这是我们在此次设计中所倾注的心意。

 

P.K.G.Tokyo 设计总监 柚山哲平

COLUMN

明治×P.K.G.Tokyo 価値を可視化し、丁寧に届けるブランド構築のプロセス

2024.06.28

今までにない、新しいことを、齟齬なく伝えることの難しさ。新商品や新規事業に関わっている方々は実感しているのではないでしょうか。また、消費者の視点に立った際も、魅力や価値がいまいち掴めないという感想を持った経験があるかもしれません。今回は、「明治 Dear Milk」のブランド構築のプロセスの話をお聞きします。P.K.G.Tokyoにおけるブランドのアイデンティティーの明確化、市場におけるストラテジー策定プロセスを中心にインタビュー形式で紹介していきます。

■本文
取材・文:大島 有貴
撮影:唐 瑞鸿(plana inc.)

 

「明治 Dear Milk」とは

「原材料、乳製品(北海道十勝製造)のみ」で作られた国内初のアイスクリーム。株式会社明治の独自製法により、「原材料、乳製品のみ」の「何も足さない」アイスクリームの開発に成功。通常、アイスクリームは乳製品とさまざまな素材を組み合わせることで、おいしさを追求していることが多い中、乳本来のおいしさを体現している。濃厚なコクと澄みわたる後味を併せ持つ、シンプルで奥深いミルクの味わいを楽しめる製品。

(右)株式会社 明治グローバルフードソリューション事業本部フローズン・食品事業部フローズンデザートG 吉岡 征史さん
(中央)株式会社 明治価値創造戦略本部 商品開発改革部 デザイン戦略G アートディレクター 井田 紀美子 さん
(左)P.K.G.Tokyo CSO(Chief Strategy Officer)中澤 亜衣

 

 

今までにない「何も足さない」おいしさのアイスクリーム

──「明治 Dear Milk」(以下:Dear Milk)2023年3月関東限定で販売開始、その後、2024年3月に全国展開を開始。人気や話題性の高さが際立ちますね。

吉岡:ありがとうございます。実は、Dear Milkは一人の開発担当の社員が、「原材料乳製品のみで、こんなに美味しいアイスできたから食べてみてよ」と社内メンバーにプレゼンを行い、製品化に向けて動き出すことが決まりました。弊社の中でそのようなプロセスで生まれた商品は、今まであまりありませんでした。品質やコンセプト等で大いに差別化ができ、明治らしさもある。これなら市場定着が果たせると思ったのです。それゆえ、ブランドを丁寧に作り上げていきたいという方針でまずは、関東圏限定かつ、販売する店舗も量販店のみにする等売り方にもこだわりました。実際に販売開始をすると、想像以上の反響をいただきましたね。「売っているお店が少ないので、隣の駅までまとめ買いをしに行っています」という声も多く聞かれ、大変嬉しかったです。そのような声を受けまして、全国販売を開始することができました。

井田:デザインの観点からみても、今までにないプロジェクトだったと感じています。Dear Milkの「原材料、乳製品のみ。何も足さないアイスクリーム」というコンセプトの世界観に合わせて、可能な限りデザインも削ぎ落としました。通例として、商品を説明するために入れるキャッチコピーもその要素のひとつです。コンセプトにぴったりなデザインができたと感じています。

一口食べて「あ、美味しい」と思わず声が出る素直な味わいのアイスクリーム。

 

「シンプルな」おいしさの価値を伝えるため、ワークショップを開催

──Dear Milkは、P.K.G.Tokyoがコンセプトの策定から関わったとお聞きしました。

井田:いつもの仕事の進め方としては、各商品に合わせてデザイン会社の選定を行います。ですが、今回の場合、製品自体が今までにない新しいものということで、しっかりとコンセプト作りから取り組む必要性を感じておりました。P.K.G. Tokyoさんは、そのようなブランドの核になる部分から一緒に取り組んでいただける会社だという認識がありましたので、今回お願いをした次第です。丁寧に取り組んでくださったので、とても感謝しております。

中澤:ありがとうございます。今回は、すでに力のある商品が存在しているところからのスタートという形でしたね。具体的にはまず、弊社と明治さんで、会社と部署を横断した総勢10名以上の混合チームをつくり、ワークショップを行いました。まずは、ペルソナの設定のワークショップに取り組み、「この商品のいいところってどこだろう」「このような商品を好きになる人はどのような人か?」といったことについてチームごとに議論をし、まとめました。その後、コンセプトにまとめるワークショップを行いました。「この商品を一言で表したらどうなるだろう」というワークに取り組み、そこで「シンプルな」「無垢な」「ミニマルな」というキーワードが出てきました。

吉岡:そうですね。弊社は、素材のおいしさを全面に出した商品を作ることが得意だと感いています。Dear Milkは、開発担当の一人の「こんな美味しいアイスができたよ!」というある種ひらめきから始まった製品でしたので、その美味しさ、素材の良さをダイレクトに伝えたかったのです。その気持ちや想いは社内で一致していたので、そのようなキーワードが出てきたのは納得でした。

中澤:その後、ワークショップで出てきたコンセプトをさらに細分化し、4パターンのコンセプト案を作り、ペルソナ設定に合わせて選定した消費者に定性調査を行いました。実際に商品の試食をしていただき、コンセプトと合わせてどう感じるかを測る調査です。

吉岡:社内で最初にDear Milkを食べた時、「うわぁ、美味しい」という驚きの感情を皆で持ったんですよね。調査でも全く同じような反応がみられたので、手応えを感じました。今までのミルクアイスとは違うのだということが伝わっている実感を得ました。

井田:また、コンセプトに対する意見は割れたところもありますが、「これは違うね」というのは、明確になった印象でしたね。最終的にはこの辺りのコンセプトかなという目星がつけられたので良かったです。

 

ブランドの骨格になるものを、様々な角度から検証していくことの重要性

──その後の商品のネーミングの設定ではかなりの数、案を出したそうですね。

中澤:そうですね。調査で得た結果から、ネーミングの選定に移っていきました。出した案の数は、全部で百以上あると思います。その中で商標や表記の事情で使えない言葉は削除していきながら、絞っていきました。「Dear Milk」というネーミングは議論の後の方に出てきたと思います。この段階でデザインも同時並行で、かなりの数の案を出していきました。数案を実際にパッケージデザインに組み込み検証して、最終的にネーミングとパッケージデザインを完成させていきました。

井田:担当部署の私たちだけで見ていると、煮詰まってしまうこともよくあるのですが、他の部署の方やP.K.G.Tokyoさんが入ってくださり、外の目があったことが良かったです。パッケージデザインに何案かを組み込んでいただいた際には、撮影も行って、しっかりと検証を行うことができました。このように時間や手間をかけて、ブランドの骨格になるものを様々な角度から検証することは、弊社の中でもなかなか叶わないことです。

──パッケージデザイン、スッキリしていて素敵です。

吉岡:店頭に並んだ時の見え方の観点から、蓋と本体の色を分けたいということはお伝えしていました。高級アイスクリームとも、手に取りやすい価格帯のアイスクリームとも違う新たなジャンルの商品にしたかったので、一目で今までとは違うということを示したかったのです。

井田:また、ロゴも大文字と小文字の使い方にも工夫をしました。小文字の方が優しさを感じるので全て大文字にはせず、「Dear Milk」という表記にしました。実は、印刷も結構大変だったんです。白が基調なので、少しでも黄色に転ぶと雰囲気がだいぶ変わってきてしまいます。前述しましたが、私の中ですごく良かったと思うことはキャッチコピーなしで「種類別:アイスクリーム」の記載に品質の説明を背負わせることができたことです。これはペルソナ設定にも繋がっていて、「種類別:アイスクリーム」という表記で品質を理解し、ご食へのこだわりに見合った商品を自らの尺度で選ぶ消費者を起点にDear Milkの価値を広げていけるのではとの想いからきています。

 

「何が価値なのか」を可視化することで、商品の魅力を齟齬がなく伝えることができた

──発売後の反応はどのようなものでしたでしょうか。

吉岡:プロモーションに関しては工夫を凝らしました。発売前のまだネーミングも決まらない段階で、「明治極秘アイス試食会」と称し、S N S等で広く告知し開催しました。参加者からの反応が非常に良く、「すごく美味しい」という声を多くいただきましたね。また、広告展開に関してもコンセプトに合わせて「何も足さない」広告ということで、東急東横線の1編成を真っ白の広告でジャックしました。商品名、コピーはニス塗りで表現し、インクを使わず、近くで目を凝らさなければ気付かない程度で広告の隅に透明な文字で「明治、アイス新発明」「Dear Milk」等と記載しました。うっすらと記載された商品名を見つけた方がS N Sで拡散するなど話題になりましたね。また、弊社には商品がどこで販売されているかをウェブ上で検索できる店舗サーチシステムがあるのですが、数多くの方にDear Milkを検索していただいており、人気の高さを感じます。私自身が商品コンセプトの策定から関わってきたので、ブランドの骨格となるものからズレることなく、プロモーションできたのではないかと感じています。

東急東横線における車両内の広告。既視感がない広告表現はSNS等で話題となった。

──最後に、Dear Milk のブランド構築について、全体としてどのような感想をお持ちでしょうか。

中澤:1年半と長い期間のプロジェクトだったのですが、明治さんと共に本当に考え抜く機会をいただけて、私のキャリアの中でも一番と言っていいほどのやりがいのあるプロジェクトでした。またこのような丁寧なプロセスでデザインを通してブランドづくりに関われたらと思います。

吉岡:「何が価値なのか」ということを、ちゃんと自分たちの頭で考え、可視化できたことがすごく良かったなと思います。社内でもDear Milkのブランド構築が、良い事例になっているという声もあり、これからもこの経験を活かしていきたいです。新商品の開発やブランドづくりは、やることが必然的に増えてしまい、とても大変です。ですが、今回のDear Milkに関しては、コンセプト策定から自分たちの手を動かしていくという点で、携わるメンバー全員が納得感を持って、ブランドの方向性を定めることができたと感じています。

井田:新しいカテゴリー、世の中にないものを売る時、伝え方が難しいがゆえに、埋もれがちになることが多いと感じています。今回のDear Milkに関しては、その価値が消費者にしっかりと伝わったことを実感していますね。また、社内のチーム、P.K.G.Tokyoさん全員がこだわりを持続できるメンバーだったので、ここまでコンセプトを研ぎ澄ますことができました。社内でも評判が高く、役員からもDear Milkについて話題にのぼるほどです。自分ごとにしながら新商品のことを考え抜く今回のような事例が、これから弊社の中で増えればいいなと思っております。本当にありがとうございました。

「明治 Dear Milk」の情報はこちら

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