P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

WITH COVID-19 – コロナのなか、わたしが思うこと。 vol.01

ビニールシートで隔てられた窓口やレジ。
真ん中をぽっかりと空けて画面の両端に映るアナウンサーとMC。
一見異様にも思える光景ですが、これは今や当たり前。

5月29日、東京都知事の小池百合子氏の会見では、長期にわたり新型コロナウイルスと共存していくという「Withコロナ宣言」が発表されました。
感染者数はピーク時より抑えられたものの、予断を許さない状況。
外出自粛が緩和されていますが、完全に脅威が去ったとは言い難くまだ油断のできない日々です。

緊急事態宣言中、私は在宅勤務にて対応していましたが、業務内容によっては会社の設備が必要なため何度かオフィスへ赴くことも。いつもより乗客が少ない電車。車両の窓が常に開いており開放的。これもウイルス対策のためですね。電車内の感染のリスクを抑えるために、つり革を直接触らずに握れるグッズも販売されているようです。

今までも販売されていた製品で、コロナの影響により急速に需要が高まったケースもあります。
その最たるものがマスクです。今や生活必需品となっています。
シャープをはじめとする多くの企業が製造・販売を始めましたが、いまだに品薄状態。
こうした需要の高まりや人々の焦りを利用し高額転売やマスク詐欺などが横行する中、正規販売店に入荷したマスクをわれ先に手に入れようと開店前のドラッグストアに並び「3密」を作ってしまう人々がいることも問題になりました。今までにない危機的状況の中、欲しいものが手に入らずに不安になる心境も理解できます。
しかし、こうした危機に直面しても、手元にあるものを使い創意工夫によって対処している方もいます。
マスクの不足には、手作りのマスクで対応できるようSNSやインターネット上にてマスクの型紙が配布されています。医療用ガウンが不足する医療現場では、ある看護師がゴミ袋を利用した医療用ガウンの代替品の作り方を公開しました。これらのニュースはささやかな出来事かもしれませんが、この創造力と発想の柔軟さはデザインをするうえで見習いたいものです。

また、必需品以外にもSNSでは様々なアイデアが飛び交います。
外遊びが出来なくなった子どもたちへ、クリエイターたちが塗り絵や紙工作キットなどを配布していました。
散歩が楽しくなるよう「おさんぽビンゴ」という素敵なものを作っている方がいました。
散歩中に見かけたもの、…例えば「のら猫」とか「信号機」とか。歩きながらチェックを付けてビンゴカードを埋めていくというものです。
旅行など遠くに遊びに行くことはまだ叶いませんが、近所をお散歩するだけでもリフレッシュになります。
この「おさんぽビンゴ」を私も作ってみました。
商品としても販売されているものもあるみたいですが、自分の手で作ってみるのは楽しいですね。

「みちくさBINGO」
道端に生えている草花をモチーフにしたお散歩ビンゴです。
全種類の植物をコンプリートするためには、結構な「みちくさ」が必要となります。
私のように運動不足を感じている方へ、オススメですよ。

↓ こちらからPDFデータのダウンロードが可能です。
200605_pkgtokyo_michikusa_bingo

最初は不安だったテレワークも一ヶ月間も続くと快適さすら感じます。朝の満員電車からの解放は一番のメリットです。外出自粛が段階的に緩和され外へ出たい気持ちもありますが、急を要する用事がない時はまだ自宅で過ごそうかなと考えています。手洗いやうがいの習慣化、マスクの着用や手指消毒で清潔を保つこと。これも継続していくことで、今後コロナ以外の感染症が蔓延した時の備えになります。
雨垂れ石を穿つ、と言います。僅かなものですが、出来ることを見つけて行動することが大事だと感じます。

P.K.G.Tokyo 佐藤光

COLUMN

手作業で紡ぐ、伝統の伊勢型紙

2020.04.05

先日発売された「UMESHU THE AMBER」。弊社でそのデザインを担当させていただきました。中身の紀州梅酒になぞらえて、伊勢型紙をデザインに使用しています。その際に三重県にある伊勢型紙協同組合様まで取材に行ってきました。今回はその一部を紹介させていただきます。

伊勢型紙とは、友禅、ゆかた、小紋などの柄や文様を着物の生地を染めるのに用いるもので、千有余年の歴史を誇る伝統的工芸品(用具)です。和紙を加工した紙(型地紙)に彫刻刀で、きものの文様や図柄を丹念に彫り抜いたものですが、型紙を作るには高度な技術と根気や忍耐が必要です。昭和58年4月には、通商産業大臣より伝統的工芸品(用具)の指定をうけました。
ー伊勢形紙協同組合HPより引用

現物を見せていただきましたが、手作業で彫り抜いているとは思えない精密さ。梅酒のパッケージに使用するため、梅をモチーフにした柄のご紹介をお願いしたのですが、それだけでも80種類近くもの伊勢型紙がありました。こういった伊勢型紙は四種類の彫り方を組み合わせ、様々な柄を形成しています。

引彫り
左手で定規を押さえ、右手に鋭利な彫刻刀をもって均等の縞を彫っていきます。最高のものでは3cm幅に31本もの縞が彫られています。染める時に縞が動かないように糸入れされます。

突き彫り
彫刻刀の柄を右頬にあてて左手で刃先を調整しながら上下に動かし、7〜8枚の型地紙を穴板の上で突くようにして彫ります。彫り終わったものは型紙を補強するために紗張りされます。

道具彫り
彫刻刀自体が紋様のひとつの単位になっていて、柄尻に親指をあて強く押して型地紙を打ち抜きます。彫刻刀はそれぞれ彫る人が自分で作ります。

錐彫り
江戸小紋を彫る最も古い彫り方で、半円形の細い彫刻刀を左手で回転させて小さい孔をあけていきます。小紋柄の最高のものでは、3cm四方に900個もの孔があけられます。

単純な柄ほど少しのズレやミスがひと目みてわかってしまうため難しいそうです。難しい柄だと一枚の制作に一ヶ月近くかかることもあり、大変な根気と集中力が必要な作業です。職人様それぞれに得意な彫りの技法があり、お互いの技術を組み合わせることで一枚の作品が出来上がります。

柿渋で貼り合わせた型地紙は、伸縮性もなく普通の和紙に比べ耐久性に富みます。しかしあくまで紙のため、永久に使えるわけではありません。先人たちが築いた様々な柄の彫り方を、現代の職人様方が引き継ぎ、そして日々改良を重ねています。そうして磨かれた技術でまた新たな図柄が生まれ、引き継がれていきます。

私たちパッケージデザイナーは多種多様なクライアントの要望に応えるため、その都度考え方や制作方法を考えます。同じパッケージといっても、完成に至るまでのプロセスは様々です。同じ作業を繰り返すことはほとんどありません。対して伊勢型紙の職人様方はひとつの彫り方を極め、日々の仕事のほとんどをその技術の向上と改良に集中しています。そこから生み出される作品は緻密で手作業でありながら手作業による隙を感じさせず、しかし人の手で作ったからこそ生まれる味わいが共存しています。縞彫りのストライプひとつとっても、整然としているのにどこか温かみを感じます。パソコンでデータをただ均等に配列しただけでは作り得ない佇まいだと思います。

現在、伊勢型紙の需要は減りつつあります。職人様の数も随分減ってしまったそうです。理由は昔と比べ着物の需要が減ったこと、また他の安価な染色の技術が発達したことにあると思います。しかし伊勢型紙の伝統は他にはない素晴らしい技術として受け継がれるべき文化です。

今回はそんな伊勢型紙の図案を紀州梅酒のパッケージデザインに使用させていただきました。初めはただその美しさに惹かれてデザインに使用させていただきましたが、取材を経て新しい需要の形を作って伝統を繋ぐための一端を担えればと思っています。ベクトルは違いますが同じくモノを作る物同士、お互いの技術を組み合わせることで新しい切り口で伊勢型紙を世に出すことができたと感じています。「売れるため」「目立つため」のための綺麗さに止まらず、こうしたバックグラウンド含めデザインの価値になればと思います。


伊勢形紙協同組合
http://isekatagami.or.jp/

P.K.G.Tokyo : 白井絢奈

COLUMN

デザインコンテスト受賞のお知らせ

2020.03.27

P.K.G.Tokyo 佐藤光が、『パッケージデザインコンテスト北海道2019』にて準グランプリを、
『おいしい東北パッケージデザイン展2019』にて審査員賞・左合ひとみ賞を受賞しました。

『パッケージデザインコンテスト北海道2019』受賞作品
男爵イモの生みの親である川田龍吉氏の恋物語をテーマに制作。
男爵の横顔の中に、想い人であるジェニーの姿を描いています。

コロナウイルスの影響により例年開催されている展示会や表彰式は中止となりましたが、WEB展示会としてウェブサイト上で応募作品を全て公開しました。
(公開期間は2020年3月23日をもって終了いたしました。)

本記事の最後に記載したURLより、受賞作品と審査評をご覧になれます。


このようなトロフィーをいただきました。

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展示会の時期から時間が経ってしまいましたが、
こちらが『おいしい東北パッケージデザイン展2019』の受賞作品です。

銀サケのオリーブオイル漬けのパッケージにて左合ひとみ賞をいただきました。

パッケージデザインコンテスト北海道2019 ウェブサイトは下記のURLからご覧になれます。
https://www.hkd.meti.go.jp/hokip/package2019/package.html

COLUMN

SDGsはデザイン経営のスタートライン。

昨今、電車や取引先でスーツの襟元にカラフルなSDGsのバッジをつけている方をよく見かけるようになりました。SDGsに対する取り組みがひとつのトレンドとなっている証拠です。もちろんサステナブルなわけですから、トレンドで終わってしまっては意味がなく、如何にして各企業がその取り組みを継続して行くかに注目しています。

2015年9月に国連で採択されたSDGs。その17のゴールはどれも社会にとって理想的な目標で、人々の生活や環境を守って行くための指針となっています。しかし、どうして経済活動一辺倒だった社会や企業が今、SDGsに熱心に取り組むのでしょうか。私はSDGsが企業を評価するひとつの基準となったからだと考えます。ものに溢れ、ものの価値が飽和した社会において、選ばれるためにはエンドユーザーが共感できる価値観が必要です。利己的な行為を繰り返す企業が支持を得られないのは当たり前ですが、逆を言えば理想的な社会づくりに一役買おうと一生懸命な企業を応援したいと思うのも人情です。しかし、それだけではこれまでの環境保護活動やエコロジー的思考と変わりありません。利己的な生産の贖罪として、莫大な利益の一部でまかなう曖昧な環境保護は常に懐疑的に見られてきました。それに比べてSDGsは目標を項目分けすることで、個々の企業がそれぞれ取り組んでいたことを分別し当てはめることができた。例えるなら、今まで「陸上競技」とされていたものを100m走、マラソン、高飛び、といった種目に分けたのです。それらのスポーツが同じ場所でルールなく行われていたとしても、我々は何を見ればいいのかわからなかった。SDGsは公に項目化することで、その企業が各ゴールに対しどれだけ真摯に向かい合っているかがが理解しやすく、さらには評価しやすくなったのです。それはSDGsが企業の評価基準になり得るということでもあります。
SDGsによる項目化は実施する企業側にもメリットがありました。2030年時点までに達成すべき目標が明確になることは、今取り組むべきテーマが具体的になったとも言えるからです。やるべきことがわかり、それが評価されるならばそれは企業にとってもチャンスです。「自らを生かすために、人のためになることをする」。SDGsを偽善的な理想論と捉えるのではなく、自らの経済活動の延長線上にあるゴールだと考える企業にこそ、リテラシーある社会からの評価が集まるのではないでしょうか。

企業がSDGsに取り組む際、17の中からセレクトするゴールとその実施内容は、経営理念によって定まると私は考えています。それはたとえ創業時と異なる事業となった企業であっても、脈々と受け継がれている理念は変わらずそこにあるからです。その事業を通じ、社会に貢献し利益を得る。理念と利益が対となっていなければ、企業は成立しません。創業時から培ってきたことだからこそ、SDGsへの取り組みと本来その企業が目指すべきゴールは重なるはずなのです。

少し話の切り口を変えましょう。2018年5月に経済産業省・特許庁は「デザイン経営」宣言をしました。
これまで、デザインは後付けで見た目を良くすることだと考える企業がほとんどで、経営とは縁遠いものだと認識されてきました。デザインという分野が専門性の高い分野で定義づけが曖昧であることがその認識に拍車をかけ、嗜好品のように考えられ「デザインは余裕のある企業が行うこと」ぐらいに軽んじられてきたように思います。
しかし「デザイン経営」では世界の有力企業がトップダウンでデザインに注力し、大きなブランド力を発揮していることを引き合いに、デザインが経営の大きなファクターであることを提言しています。

https://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180523002/20180523002-1.pdf
※デザイン経営 – 経済産業省

SDGsを契機にデザイン経営のスタートラインに立つ。企業がSDGsに取り組むため、自社のルーツを見つめ直す時。その時こそデザイン経営にシフトするチャンスであると私は考えています。企業理念に基づきSDGsに取り組むなら、自分たちのことを社員にも他者にもわかるように説明できなければなりません。「なぜ私たちはそのテーマに取り組むのか」。デザインが持つ力は可視化による共感です。ルーツやヒストリーを可視化しステークホルダーと共有しましょう。パーパスを可視化し社会と共有しましょう。コーポレートアイデンティティを再定義しブラッシュアップしましょう。目指すべきゴールを見据え、理想の働き方やオフィスを可視化しましょう。それらはすべてデザインによって可視化されることで達成されるものです。社長直轄のデザイン戦略室を設置し経営戦略のベースにデザインを組み込み、内外に向けアイデンティティを再確認するのです。そして、商品やサービスにおいてもそれは言えること。価値を可視化しエンドユーザーに届けましょう。価値は相手に届かなければ無価値です。UI・UXであれ、プロダクトデザインやパッケージデザインであれ、人はデザインを通してコミニュケーションするのです。デザインを無視して価値を届けることはできません。「デザインは余裕のある企業が行うこと」という考えは、極論を言えば社会とコミニュケーションしないと宣言しているようなものです。ものを作れば売れる時代は終わりました。ステークホルダーが共感でき、ブランドをそこに見い出すためにはデザイン思考による経営が不可欠なのです。

P.K.G.Tokyo ディレクター:柚山哲平

COLUMN

「パケ買い」と韓国コスメ

2020.03.14

一度はパッケージ買い、いわゆる“パケ買い”を経験したことがあるという人は多いのではないでしょうか?
「可愛い!」や「美味しそう!」と思って買うことはあっても、「なんだこれ!?」という衝撃を受けて、思わず手に取ってしまう商品は意外に少ないのではないかと思います。私は旅先で下記の商品を、日本語表記もなく、多分フェイスマスクだろうという感覚のみで、パッケージの奇妙さとインパクトに惹かれ、気づけば買っていました。

これは韓国のコスメブランド「Dr. Jart+」のモデリングマスク「Shake & Shot」といって、自分で顔に塗ってマスクを形成するフェイスマスクです。
「Dr.Jart+」というブランドは、皮膚の専門医や専門家によって作られた韓国のドクターズコスメだそうです。
目を瞑ったリアルな顔が型取られたフタに、棒状のものが突き刺さっているというなんともシュールなパッケージ。それに加えて色がポップ。どうやらこの顔は美容成分を吸っていることを表現しているようです。

中身はどうなっているかというと、ブースターの1液と一般的な美容液よりも高い効果が得られるとされている、日本ではあまり馴染みのない「アンプル」の2液が入っています。そして気になる棒の正体は、顔に塗るためのスパチュラでした。

韓国コスメは美容効果の高さに加え、パッケージが可愛く斬新なデザインが多いことも人気の理由です。
下記の商品は、「TONYMOLY」のジェルアイライナーです。羽ペンとインクのボトルを模したブラシと容器が一体型になっています。

羽ペン型ブラシも2種類ついており、選ぶ楽しさもあります。ただ斬新で可愛いだけでなく、カラーバリエーションが豊富で、それでいて容器としての機能が高いものも多く見られます。

見たことのない驚きと発見した喜び、選ぶ楽しさや所有する満足感など、魅力的なパッケージは、言語が通じなくても国境を越えあらゆる人々の心を豊かにするコミュニケーションツールの一つではないでしょうか。
日本コスメの繊細で美しいデザインも魅力的ですが、たまには大胆で斬新な韓国コスメのパッケージデザインに注目してみるのも新たな発見があり、面白いと感じました。

P.K.G.Tokyo 竹添麻鈴

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