P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

SNSの「パケ買い」からみる大量生産品のパッケージデザイン

“パッケージデザインという分野においては、これを専門とするデザイナーがいるはずだが、歴史を振り返ってみても、グラフィックデザイナーとして多彩な仕事をしてきた者の多くはこれまで、大量生産品の「デザイン」を、むしろタブー視していたのではなかったか。それらはまともに議論するにあたわない、猥雑なものであると見放してきたのではないだろうか。ところが現実は異なる。私たちはどんなに著名なデザイナーが手がけたグラフィックやプロダクトよりもずっと身近に大量生産品を感じ、日々それらを使い、暮らしている。つまりデザイナーがそれら大量生産品から目を逸らすことは、暮らしそのものから目を逸らすことと同義とも言えよう。”

出典:佐藤 卓.「大量生産品のデザイン論 経済と文化を分けない思考」(2018.01).株式会社PHP研究所,P.12

 

「パケ買い」という言葉が大量生産品にも使われる姿を、SNSで見かけるようになりました。実際に企業側も「パケ買い」を意識したであろう打ち出し方をしている商品も見かけます。それほどまでにSNSが持つ効力が無視できないフェーズに突入しているということだと思います。

レコードやCD、書籍などの、ストーリーや情緒が重視される商品に使われる「ジャケ買い」は聞き慣れた言葉です。佐藤卓著の「大量生産品のデザイン論」引用にもみられるように、スーパーやコンビニに並ぶ大量生産品のパッケージデザインはいわゆる「デザイン」の成果物として認識されることが少なかった、あるいは今も少ないように思います。グラフィックとしての美的価値への探求よりも、商品の情報伝達が優先されることによって、デザイナーの作品としての掲示が少ないことも理由の一つです。パッケージデザインは、商品としての「中身」が存在し、それらを「梱包」するプロダクト的な役割と「情報伝達」するグラフィック的な役割を担っています。商品の中身とパッケージデザインが持つ情報がノイズなく伝わることにより「商品自身」がフォーカスされ「パッケージデザイン」自体へ意識が割かれないことも理由に挙がるかもしれません。

スマートフォンの普及とともに、SNSも急速に進化を遂げました。一個人が世界中に向けて情報を発信することが容易になったととも言えます。「パケ買い」という言葉とともにSNSに投稿される商品をみると、パッケージデザインとしての役割と責任の範囲がより広がったと感じます。

パッケージデザインには「美味しそう」、「便利そう」、「効きそう」、「面白そう」などなど、消費者の方に手に取っていただけるように様々な情報がメッセージとしてこめられています。「パケ買い」という言葉には、そんなあれこれを飛び越えてパッケージのビジュアルが気に入ったので購入したというフィーリングを感じます。SNSを通じて「パケ買い」のタグを投稿することは、購入いただいた消費者からさらに第三者へ己の持っている審美眼や、価値観を共有するような意味を持っているように思います。元々は装飾品などに求められていたような、より良い見た目への審美眼がじわじわと大量生産品にも降りてきているような感覚があります。

SNSへの投稿のための購買は、中身の本質と離れたところに価値を見出してしまう懸念があります。ただ、根本の思いは自分の「好き」を人と共有したいという想いではないかと私は思います。「好き」に選んでもらえることは、デザインを制作している側としてもとても喜ばしいことです。商品自身が持つ良さを情報として伝えるとともに、消費者の審美眼にも訴えかけられるデザインを両立したアウトプットで 「好き」を勝ち取っていけることが、商品にとっても消費者にとってもベストな道だといえます。

SNSで見栄えするパッケージが必ずしも店頭で映えるパッケージとはイコールではないのが難しいところです。コンビニやスーパー、ドラッグストアでは各社がそれぞれ販売戦略を持って、様々なアプローチで演出した商品が一同にずらっと並びます。トーン&マナーが統一された専門店と前述したようないわゆる大量生産品を比べると、商品パッケージの顔つきは大きく変わります。

「パケ買い」を意識したパッケージデザインを作り上げるには あくまで商品棚での苛烈な競争に打ち勝った上で、SNSでの情緒的な見た目の演出も兼ねなければなりません。SNSで目立つことが先行してしまい、肝心の商品を置いてきぼりにするようなデザインでは 一過性の売り上げは見込めたとしても長く愛される商品に育てていくのは難しいと思います。その匙加減の調整にプロとしての技量を問われていくことになるのだと思います。

私たちの仕事は、デザインを通じて一人でも多くの方に、一つでも多くの商品を選び取っていただくことです。一つ一つの商品が、企画開発や流通、品質管理などたくさんの工程と苦労をへて生まれます。最後の顔となるパッケージを託されることは、大きな責任が伴います。

SNSの台頭に限らず、デザインに求められることは 時代の移り変わりとともに変遷していく部分があると思います。新しい価値観へのアンテナを持ち続け、企業、商品、消費者に寄り添ったデザインを常に更新していきたいと思います。

 

P.K.G.Tokyo  白井 絢奈

INTERVIEW

ロッテ×P.K.G.Tokyo ブランドを育てていくために必要なこと *前編

この記事はJPDAのWEBマガジン『ぱっけーじん』からの転載記事です。(https://packajin.jpda.or.jp/brand_lotte_1/)2024年7月25日掲載

 

私たちの生活の周りでは、毎年数多くの新商品が生まれています。その新商品がブランドとして定番化され、長く愛される存在となるには、その過程でどのような努力がなされているのか。「ロッテ プレミアムガーナ」のブランドの開発と成長に関わってきた株式会社ロッテの担当者とP.K.G.Tokyoの柚山さんを交えてのインタビュー対談です。

取材・文:大島 有貴  撮影:唐 鸿plana inc.

「ロッテ プレミアムガーナ」とは

今年、60周年を迎えるロッテガーナブランド初のサブブランド。「一日の終わりに、ご褒美時間。」をコンセプトに、高級感や特別感を感じる商品だ。202110月に発売し、商品の美味しさはもちろんのこと、洗練されたパッケージデザインにも注目が集まっている。

cl. 株式会社ロッテ
cd. 石井美希(株式会社ロッテ)
ad. 柚山哲平(P.K.G.Tokyo株式会社)
d. 白井絢奈(P.K.G.Tokyo株式会社)

 

(左)株式会社ロッテ マーケティング本部 ブランド戦略部 ガーナブランド課 山口 洸也さん(中央)株式会社ロッテ マーケティング本部 情報クリエイティブ部 デザイン企画課 石井 美希さん(右)P.K.G.Tokyo CCO(Chief Creative Officer)柚山 哲平さん

 

今まで培ってきた「安心感」と、生活者のニーズを満たした「プレミアムガーナ」

 

──「ロッテ プレミアムガーナ」(以下:プレミアムガーナ)発売から4年目を迎えるとのことですが、ブランド立ち上げの経緯を教えていただけますでしょうか。

 

山口:ガーナミルクチョコレート(以下:ガーナ)は1964年に誕生した弊社チョコレート製品の中で第一号の商品です。ミルクチョコレート発祥の地、スイスの技術者を日本に呼び、高品質のチョコレートを完成させました。そのガーナが、今年60周年を迎えます。産地であるガーナの方々のカカオへの情熱と、消費者へ美味しいチョコレートを届けたいという弊社の熱い想いを重ねて「ガーナ」という商品名にしました。その想いはパッケージにも反映されており、情熱を赤色のパッケージで表現しております。当時、チョコレート商品に社名を入れることや、茶色をパッケージに使うことが通例でした。そんな中、品質へのこだわりが伝わる商品名と赤色のパッケージが、大変注目を集めたとのことです。

今回お話する「プレミアムガーナ」は、202110月に発売することになるのですが、その1年前頃から様々な検討、調査を行っておりました。当時はコロナ禍で、生活者にストレスが多い生活環境がある状況です。実際に調査を行ったところ、ご褒美・特別感へのニーズの高まりに加え、買い物に失敗をしたくない、そして食品としての安心感がニーズとしてあがりました。そこで、長い間ご支持いただいてきたガーナが安心感を担保しながらも、高級感を兼ね備えた「プレミアムガーナ」の開発が進んでいくことになりました。ガーナとして、サブブランドを作ることは初めての試みでした。その時はまだ「プレミアムガーナ」というネーミングも決まっていない状況でしたが、以前からデザイン開発でお世話になっていたP.K.G.Tokyo(以下:P.K.G.)さんに早い段階で、ご相談させていただいた経緯があります。

柚山:そうですね。商品の企画当初から関わらせていただきました。ネーミング案をP.K.G.からも出させていただいた上で、調査を行い、その結果を元にロッテさんと議論を尽くし、最終的には「プレミアムガーナ」という万人にとってわかりやすい名前に決定しました。実は、プレミアムガーナには、その前身と言えるガーナのプレミアムラインの商品が存在しました。その中でも、弊社が携わらせていただいた「ガーナ マリアージュ <ストロベリー>/<ブルーベリー>」(20204月発売)でのシンボリックな表現が、大胆で高級感があると評価され、翌年の「プレミアムガーナ」誕生へと繋がっていきました。

 

「一日の終わりに、ご褒美時間。」という価値を伝えつづけ、育てるために

 

──発売後、売上を含めたブランドの成長はどのようなものでしょうか。

 

山口:発売前から、社内の期待値はとても高かったです。高級感を感じながらも、ガーナブランドであることがちゃんとわかり、安心感と美味しさが担保されていることがデザインに反映されていました。一つ懸念点として上がっていたのが、ガーナのブランドカラーである「赤」が使われていなかったことでした。これまで大事にしてきたブランドカラーである赤色を手放して、果たしてガーナと思ってもらえるのかと。ですが、実際に発売に至るとその懸念はすぐに払拭されました。結果的には202110月に発売したプレミアムガーナ5品は、前年品と比較して約2倍の伸び率でした。今年で4年目を迎えるブランドですが、発売当時から販売数を年々増加させ順調に成長しています。さらにラインナップの充実やコラボレーション展開などを経て、今や誰もが知るブランドに成長しました。

柚山:ブランドが着実に育ってきているのは、とても嬉しいことです。当時のデザインの裏話ですが、立ち上げ当初は「プレミアムガーナ」という名前をしっかり覚えてもらうために、パッケージデザイン上でロゴを大きくわかりやすく配置していました。その後、発売から時間が経ち、ブランドの認知度が上がっていくにつれて、ロゴサイズは少しずつ小さくしていく傾向にあります。その時々で、ブランドの受け取られ方は変わっていくので、世間からの認知度に合わせてデザインも変えていく必要があるのです。石井さんとは、そういったことを始めとしてとにかく議論を尽くしてきました。

石井:そうですね。近年、コラボ商品も増えていく中で、毎回ロゴの大きさをはじめとした見せ方について柚山さんと時間を割いて、とことん議論をしています。私はブランドの立ち上げ2年目からデザインを担当していますが、2年目はどのブランドも苦戦しがちです。そのタイミングで前任からバトンタッチされたので、個人的にも悩みながら進んできた経緯があります。特に、コンセプトである「一日の終わりに、ご褒美時間。」がどのようなお客様にもデザインを通して伝わるよう模索してきました。例えば、「ご褒美時間を過ごしたい」と思われているお客様にとって、過剰な情報は必要ではないのではないかと考えました。そこで、文字情報を精査し、美味しさがダイレクトに伝わるシズルの表現にこれまで以上にこだわることで、シンプルでリッチな気分が味わえる堂々としたデザインが完成いたしました。

柚山:やはり、クライアント側の意向として、パッケージの中にたくさん文字情報を入れたいと思うのは普通だと思います。それは商品に対しての作り手の熱意ですので、至極当然だと思うのです。しかし、ややもするとセールス的で、一方的だと取られてしまう可能性があります。消費者の気持ちを慮り、情報をコントロールする。その両者にとっての通訳のような役割がデザインだと思います。石井さんはロッテさんの中にいながらも、作り手の熱意と消費者の間に立ち、社内に真摯に働きかけてくれたからこそ、今のシンプルで高級感のあるデザインが実現したと思うのです。関わるメンバーが等しくブランドへのリテラシーを高く保ち、周りにも波及させる行動をしてきたからこそ、ブランドがうまく育ってきているのだと感じています。

 

対話し、議論を尽くすことのできる関係性を築く重要性

 

──なぜ、メンバーが等しくブランドに対するリテラシーを高く持てたとお考えですか。

 

柚山:うまくいった場合も、そうでない場合も「なぜそうなったのだろう」というロジカルな議論ができ、お互いの感情論で仕事をしないことだと思います。例えば、写真のレイアウトやカラーリングなど、一体何が起因して反応が良かったかを分析しながら、商品の売れ行きに一喜一憂することなく、次なる商品の議論を行ってきました。

石井P.K.G.さんとの議論は、いつも皆さんが忖度なしの本音で話してくださります。それゆえに、こちらも本音で対峙しなければ失礼だなと感じるところがあり、そのような関係性で議論し合えることがとても心地よいです。社内のデザイン担当が1人なので、P.K.G.さんがもはや社内の人間なんじゃないかという感覚がありますね。もちろん、意見がぶつかり合うこともあるのですが、そういったことがあるからこそいいアウトプットができていると思います。腹を割って話せる関係が、成功要因の一つだと感じています。

柚山:弊社のパーパスには「対話」という言葉が入っています。問題の本質について時間をかけて一緒に話していくということです。また、私個人のデザインへの考え方は「話せばわかる」というスタイル。基本的にクライアントの「こうしたい」というオーダーの裏には実は社内の事情などによる「こうしなければならない」という本音が隠れていると考えています。その事情を相談していただければ、「じゃあこのような別の方法がありますよ」とこちらも抜本的な提案ができるのです。ですが、その事情がわからないと代案も出せない。本音を喋っていただくことで、状況を理解した上で最善の道を一緒に探せるのです。ロッテさんとは日頃から本音で議論させていただいているので、本当にいい関係が築けたと思っています。

後編に続きます。

COLUMN

「包む」ことを想う。

2024.05.01

「包む」ことを考えるとき、思い出される一つの詩があります。

 

包む    草野心平

霙にぬれた冷たい手々を。
母親のあったかい掌(て)が包み。
病気になった小鳥のからだを。
真綿が包む。

風呂敷のように包むことが。
風呂敷そのものが。
日本民族の愛の象徴で。
その傳統のはての包みが。
いまも生活のなかに生きている。

柏の葉で餅を包み。
紫蘇の葉で梅の身を包み。
笹の葉ですしを包み。
朴の葉で豆腐を包む。
紙に包まれた割箸。
油紙で包まれたともしび。

田を耕して米をつくりその肉身の莖をあんで米俵をつくり。
雑木を切って炭を焼き芽をあんで炭俵をつくる。

藁編みの雪の深畓。
霜焼けを包むてっけやし。
お高祖頭巾や帽子(シヤツポ)簑。

われらの先祖の智慧と愛とは。
生活の中の包みの具々を発明した。

夜中まぶたは瞳を包み。
地球のまわりを空気が包む。

註)「てっけやし」は秋田地方に古くからある藁で編んだ手袋。

 

この詩は、日本の伝統パッケージを紹介する岡秀行さんの著書、【包 TSUTSUMU – THE ORIGIN OF JAPANESE PACKAGE】の巻末に収められた、蛙の詩人としても名高い草野心平によるものであり、読む度に新たな発見と好奇心を与えてくれる、そんな一編です。

この詩を眺めていると、「包む」ことが、いつの時代もそれぞれの時代背景によって変化し、形を変えながらも、人々の心や感情、それぞれの生活に密接に寄り添いながら在り続けているものだということに、改めて気づくことができます。そして、作者の草野心平が、「包む」ということを、人々の営みを起点とする視点を持ちながら、とてもあたたかな慈しみの眼差しで捉えていたことが、理解できるのではないでしょうか。

衣食住の全てに深く関わる「包む」という行為が持つ可能性は大きく、それらすべてを飛躍させることのできる力を持つものです。社会や生活をより豊かなものにするために、これまでも多くの包みが生まれ、育まれてきました。

「包む」とは、皆さんにとってどんなもので、どんな意義を持つものでしょうか?

大好きなこの「包む」の一編が、イメージを拡張させるヒントとなり得ることができましたら、幸いです。

 

 

 

P.K.G.Tokyo 矢内靖子

COLUMN

パッケージデザイナーとしてこれからのAI時代との向き合い方

最近AIの発展は目覚ましく、近い将来私たちの日常生活に大きな変化が訪れようとしています。

中でも生成系AI(ジェネレーティブAI)と呼ばれるさまざまなコンテンツなどを生成する事が出来るAIには、私たちクリエイターはこれからの動向に関心を持たざるを得ない事柄です。

クリエイティブ業界で広く浸透しているAode社も生成AI開発に注力し、昨年「Adobe Firefly」がリリースされ注目を集めているように、私たちのすぐ近くまでAIの技術進化が迫ってきています。

これから本格化するであろうAI時代の中で私たちクリエイターはどう向き合っていくべきなのでしょうか。

伊藤園が『画像生成AI』を活用したパッケージデザインを発売

昨年秋頃、伊藤園から『画像生成AI』を活用したデザインで「お~いお茶 カテキン緑茶」をリニューアル発売したとのニュースがありました。これは業界初の試みとのことです。

デザイン開発とマーケティング・リサーチを行う株式会社プラグが、パッケージデザイン用に開発した『商品デザイン用の画像生成AI』を活用し、AIで生成された画像を参考に、イラストやデザインをデザイナーが手直し、パッケージデザインを完成させたとのことです。

現時点ではまだデザイナーなどの人の手を加える必要がありますが、短時間で大量の多様なアイデアの創出が可能になるので、パッケージデザイン開発におけるプロセスが大幅に短縮されたと言われています。


引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000062916.html

1.AIでデザインを生成
2.生成したデザインを見ながら、方向性のディスカッション
3.デザイナーによるデザイン作成
4.パッケージデザインAIで評価し、デザインを絞りこむ
5.デザイナーによるデザインのブラッシュアップ
※1~5の作業を複数回繰り返し、最終的な商品デザインを選定

株式会社プラグの『商品デザイン用の画像生成AI』に限らず、AIは過去の膨大なデータから瞬時にアウトプットするので本来膨大な時間がかかるプロセスを大幅に改善してくれるので私たちの仕事にも大きな影響がある事が予想されます。

これからのAI時代との向き合い方

これからの将来AIの技術は進歩し、正直どのような社会になっていくか予想もつきません。

グラフィックデザイン業界も歴史を遡れば、版下を1つ1つデザイナーが手作りしていたり、1文字を入れる為に写植を使用したりというアナログな時代を経て、PCでデザインから入稿まで出来る時代がやってきたりと激しく便利に移り変わって来ました。
伊藤園の例のように、パッケージデザインの開発までにAIが関わってきているのが現実ですが、「仕事を奪われてしまう」という不安からAIを恐れたり、拒絶したりするのではなく、上手に付き合っていくのが重要だと私は考えます。

1.AIの発展・技術力を素直に認める
2.AIに得意な分野はAIに任せつつ効率化した時間をクリエイティブ作業に充てる
3.クリエイティブに重要な分野はAIに任さない

AIの技術力はどのような分野でも必要不可欠な時代が来る事が想定される中で、「どこをAIに任せて、どこを任さないか」を明確化する事は私たちがAIと上手く付き合っていく為に重要な視点だと考えます。

AIが過去のデータから多くの配色やレイアウトなどのデザインパターンなどを短時間でアウトプットするのが得意なら、私たちはそこに掛けていた労力や時間をより重要なクリエイティブフィールドに割くことが出来ます。

そうすることで今よりもっと発展的ディスカッションが行なったり、じっくり時間を掛けて重要な検証や判断をするなど、クリエイティブの質をより上げる事ができるのではないかと考えます。

そしてこれから、私たちにはより高いクリエイティブスキルが求められるようになるでしょう。

・AIが生成した多くのアウトプットから最善を選ぶ経験と判断力
・頭の中にあるイメージを正確に言語化して指示できるディレクション力
・社会の変化を見極め時代にあった付加価値をアウトプットできる表現力

短時間で大量のデザインが生成される時代では、他とは違う付加価値を与え、どう差別化を計るのかを考え模索するという、ビジュアル表現だけではない、見えない領域までを含めて「デザイン」と捉える時代になりつつあるのだと思います。

これからAIがデザインを担う時代になったとしても私たちの「求められるデザインはどんなものか」を考え続ける事は何ら変わりません。

最終的に商品やサービスを利用するのは「人」であることは変わらないので
「人」に求められるデザインは「人」の力なくしては成り立たないのではないでしょうか。

引用記事:業界初!『商品デザイン用画像生成AI』を活用したデザインで伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」リニューアル発売

P.K.G.Tokyo 長田庄太郎

COLUMN

言葉で紐解くパッケージ。「包装」が担う十の役割。

パッケージデザインの仕事に携わるようになったのはいつからだろう。
グラフィックデザインを学び、広告業界からキャリアを始めた若きデザイナーは今、パッケージデザインを強みとするブランドマネジメントエージェンシーP.K.G.Tokyoを率いている。しかしながら、振り返ってみてもパッケージデザイナーを志していたという記憶はない。だから今の立場が自らの意志だったのか、社会からの要請だったのかは知る由もないが、パッケージデザインが面白いということはしっかりと体に刻まれたようだ。

さて、パッケージデザインの何が面白いのか。いろんな見方や切り口から面白さを見出すことができるのですが、最も特徴的なこととの一つとしては、他のグラフィックデザインの媒体と比較して「さまざまな役割を担っている」ということではないでしょうか。今回はパッケージデザインの役割を、言葉から紐解いてゆきたいと思います。

「包む」と「装う」

そもそも「パッケージ」は語源そのままのカタカナ英語ですが、日本語では「包装」がパッケージそのものを表していることと思います。熟語としての「包装」は「ものを包む」ことが主な意味合いですが、漢字をばらして眺めてみるとパッケージデザインの役割が見えてくるようです。「包装」という熟語をバラすと、「包」と「装」という二つの漢字が現れます。「包む」こと、と「装う」こと。それぞれの言葉から、さらに役割を見出します。

 

 

「包む」が担う五つの役割。

「包む」という言葉を眺めてパッケージとの連動性を考えてみると、物理的な言葉が五つ浮かび上がってきました。

1. 「守る」
2. 「保つ」
3. 「運ぶ」
4. 「分ける」
5. 「束ねる」

「守る」=壊れないようにするための緩衝材としての役割。基本的にはあらゆるパッケージに必要な機能です。

「保つ」=長持ちさせるために、保存容器としての役割。瓶や缶など、食品や飲料において求められる機能です。

「運ぶ」=移動をともなって、中身を届けるための役割。持ち易さや流通し易さを考慮した機能です。

「分ける」=大きいものや多いものを、最適なスケールに分割するための役割。並べたり、配ったりすることを促す機能です。

「束ねる」=小さいものや細かいものを、最適なスケールにまとめるための役割。セットやアソートなどで、群で見せる機能です。

これら五つの物理的な役割は、複層的にデザインされ一つのパッケージとなってゆきます。

 

 

「装う」が担う五つの役割。

「装う」という言葉からは、パッケージにどのような「服」を着せてあげるのか、というイメージで五つの言葉が現れます。

6. 「美しく」
7. 「知らせる」
8. 「価値」
9. 「利便」
10. 「配慮」

「美しく」=姿や佇まいをより美しく見せる役割。相手に届ける贈り物やギフトには必須の要素です。

「知らせる」=中身の大切さや危険度などを伝える役割。情報伝達メディアとしての機能です。

「価値」=隠れている中身の価値を表す役割。格式やブランド化を図ることもパッケージの重要な役割の一つです。

「利便」=パッケージにまつわる体験を、簡単・便利にする役割。コンパクト、軽い、開け易い、捨て易いなどの機能です。

「配慮」=環境にまつわる配慮をとりこむ役割。素材選びや循環を考慮することはこれからの時代に欠かせません。

「装う」から現れる五つの言葉からは、パッケージデザインをより魅力的にする情緒的な要素が見出されるように思います。

以上の十項目が、「包装」が担う十の役割です。
パッケージデザインは見た目だけではなく、さまざまな役割を担っているから面白い。そして、これからも、時代に合わせて役割を担うことができるデザインのジャンルの一つとして発展してゆくことを信じています。

P.K.G.Tokyo ディレクター 天野和俊

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