前回「デザイン経営」を達成すべき最大の目的を、「グローバル市場における企業競争力の向上」と言い表しました。しかしながら、グローバル市場と言われるとイメージがつかない…という企業も多くあるだろうということは容易に想像できます。そこで、もっと広く自分ごと化していただくためにも、改めてこのような言い方で話を進めてゆければと思います。
「デザイン経営」の目的は、”より大きな/新たな市場”における「企業競争力の向上」である。
いかがでしょうか。今までの市場にとらわれず、より大きな、そして新たな市場を開拓するための戦略的な経営手法が「デザイン経営」であると理解してみると、多くの企業にとって無視できないものになるのではないでしょうか。
さて、それでは「デザイン経営」を始めるにあたり、まずどんな一手を打つ必要があるでしょう。今回取り上げるべきはじめの一手とは、そう、タイトルの通り、デザイン経営の「布陣」です。
経済産業省特許庁の「デザイン経営宣言」には、実践のための具体的な取組について7つの項目が掲げられています。とても深く専門的な考察の元に導き出された実践のための7つの取組は、デザイン業界においても初めて明文化された価値あるオープンソースです。今回はそのうちの最初の3つについてを取り上げてみます。
1 デザイン責任者(CDO,CCO,CXO等)の経営チームへの参画
2 事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
3 「デザイン経営」の推進組織の設置
少し読み込んでみると、これらは全て体制に関する内容であり、 1、2、3は一体であるとも読み取れます。つまり、「1.デザイン責任者」が中心となる「3.デザイン経営推進組織」が「2.(経営の)最上流からデザインが参画」する、という流れです。これらの体制を取ることが、デザイン経営のはじめの一歩であり、かつ最終形ともいえます。
経営者の隣あるいは直下に配属されるデザイン責任者はまさに「デザイン参謀」のよう。これこそがまさにデザイン経営を始め、実践してゆくための「デザイン経営の布陣」です。
いやしかし、うちにはデザイン責任者も推進組織も担える人材がいないがどうしたら良いか、という組織もあることでしょう。その場合には外部の人材や組織にアウトソーシングすることから始めましょう。社内外一体の推進組織づくりができれば、ゆくゆくは社内で賄えるような人材も育つことでしょう。組織メンバーが全て社内人材となること、それこそが最終形として理想の形かもしれません。
「デザイン経営の布陣」づくりを、デザイン経営を実践するための不可避な取り組みとして、今一度、組織の見直しをするきっかけにしてはいかがでしょうか。
P.K.G.Tokyoディレクター 天野和俊