P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

漢字の国の、漢字のデザイン。

2024.07.26


漢字はやっぱり難しい。

これまでいくつのロゴタイプを制作してきたでしょうか。世に出なかったものやプライベートな作品も合わせると、かなりの数の書体を制作してきたように思います。そしてたくさんのロゴタイプを手掛けてみて感じることのひとつには日本語のロゴタイプ、とりわけ漢字のロゴタイプはとても奥が深いということです。多くの画数を持つ漢字の制作は、アルファベットよりも圧倒的に手がかかります。アルファベットの大文字は元々、石に刻む目的をルーツに持つものなので構造も直線的でシンプル。さらに文字の種類と画数が少ないので、タイプフェイスがもとより図形的でマーク化しやすいのです。それは小文字であっても基本的には同じで、曲線が増えることでの難しさはありますが図形としての明快さは変わりません。一方、漢字はというと文字の種類と画数が多く複雑なことに加え、止めや跳ね、払いなど、いわゆる永字八法と言われる一筆ごとの表情も多彩です。そのほかにも例えば楷書と隷書では基本的なシェイプが違うことに加え、筆使いも変化しその結果生まれる形状が書体のセリフ(飾り)に影響したりします。そういった漢字のつくりやルーツを調べていくと、そのひとつひとつが深く形に影響を及ぼしていることがわかり、漢字をロゴタイプとして仕上げていくには、技術と同時に知識が必要なことにも気付かされます。そして母国語であることも、そのハードルをさらに上げる要因です。私たちが日常的に書いたり見たりする文字だからこそ、誰しもが微妙な配置のズレや間隔の広狭など、ちょっとした変化も違和感として感じ取れてしまうからです。

漢字の国のためにつくった漢字のデザイン。

さて少し話は変わりますが、P.K.G.Tokyoでは中国で発売される商品のデザインもしています。ミネラルウォーターで有名な中国の大手飲料メーカー、農夫山泉から発売されている「农夫果园」というフレッシュジュースです。中国を代表する企業の流通網はとても広域で、中国のどこでもその商品を見つけることができます。当然ながら「农夫果园」のロゴタイプも中国語。つまりは「漢字」です。このロゴタイプの制作に着手する際、なんというか感慨深いものを感じました。漢字の生まれた国のロゴタイプを日本人の私がデザインするということは、文化的な回帰であるのだと。どこか恩返しのような、それでいて里帰りのような気持ちです。漢字の歴史3300年へのリスペクトも相まり普段使い慣れた文字でありながら、漢字を使うことに対してのある種の責任のようなものも感じました。中国と日本のみが使う漢字という文化。両国それぞれに醸成された文化への尊重。そういった思いを意識せずにはいられないお仕事でした。漢字は日本でも使う文字とは言え、「农夫果园」という4字には日本の常用漢字には含まれないふたつの文字があります。农(農)と园(園)です。どちらも難しい漢字ではないですが、これまでに書いたことのない文字。まずは手書きでの練習です。「『衣』の筆運びにも似ているが、どこかバランスが違う気もする…」そんな微調整を繰り返えし、ようやく完成したのがこのロゴタイプです。

「农夫果园」のロゴタイプは緑葉のシルエットを持ったロゴタイプです。ビビットでカラフルなパッケージデザインに映えるグリーンリーフによって、ボトル自体がひとつの果実のような存在に感じ取れます。よりフレッシュに、より若々しく。しかし、これまでのファンを裏切らない安心感のあるデザインに仕上がりました。日本人の持つ繊細な感覚を通して、漢字を使う国から漢字の生まれた国への文化的な恩返し。そして国籍を問わない普遍的なデザインによって、共感できる価値の提供をする。そんな思いを込めたデザインです。

P.K.G.Tokyo ディレクター 柚山哲平

 


汉字之国、汉字设计

汉字设计果然是很难。

到目前为止,我已经制作了多少种徽标呢?如果把那些没有公开的作品和私人作品也一起算上,我想我制作的数量还是相当可观的。通过大量的徽标设计,我深刻体会到日文字体设计,尤其是其中汉字的部分是非常深奥的。制作笔画众多的汉字字体,比起西文字母要耗费更多的精力。西文的大写字母为了雕刻在石头上,其结构直线且简单。再加上字母种类和笔画较少,因此字母本身图形化、标记化较为容易实现。这点在小写字母上也基本相同,尽管曲线增多带来了一些难度,但作为图形平明易解的特性并未改变。

另一方面,汉字种类多、笔画复杂,此外还有所谓的“永字八法”——如停顿、跳跃、挥洒等笔法的多样性。此外,不同书体如楷书和隶书,不仅基本形状不同,笔法也有所变化,结果导致字体的装饰(衬线)也受到影响。通过研究汉字的构造和起源,可以发现每个细节都会深刻影响其形状,要将汉字作为徽标设计完成,除了技术之外,还需要丰富的知识。此外,使用汉字作为母语的身份也进一步提高了设计难度。正因为我们日常书写和观看这些文字,任何人都能敏感地察觉到细微的排列偏差或间距变化,并可能会感到不适。

 

为汉字之国设计汉字。

话题稍微转换一下,P.K.G.Tokyo也为中国市场的产品进行设计。比如由中国著名饮用水企业农夫山泉推出的“农夫果园”混合果汁。作为中国代表性企业之一,其销售网络遍布全国,在全国各地都能找到这个产品。理所当然“农夫果园”的徽标就是用中文,也就是汉字。当我开始着手设计这个徽标时,心情颇为复杂。作为一名日本人,设计汉字起源地的标志,这是一种文化的回归。感觉像是在回馈,又像是在探访远房亲戚一般。处于对历史悠久的汉字的尊重,让我在使用这些平时都习惯了的文字进行设计时,感受到了一种责任感。现今汉字主要在中日两国使用,应当对两国各自孕育出的文明都要保持敬意。这份工作不经意间让我无法不去思考这些。此次徽标设计,汉字虽说在日本也使用,但“农夫果园”这四个字中有两个汉字并不属于日本的常用汉字,即“农”和“园”。这两个字不算难,但我也从未写过。首先先从手写练习开始吧,“这个笔画有点像‘衣’,但感觉某些地方的平衡有点不同……”就这样经过反复微调,终于完成了这个徽标设计。

“农夫果园”的徽标是一片绿叶的剪影。这一片色彩鲜明的绿叶,与饮料瓶的包装设计相得益彰,让整个瓶子正好看起来像一颗新鲜的果实。整体设计更加清新、年轻,同时也保留了让老顾客安心的熟悉感。通过日本人特有的细腻感受,以使用的汉字为媒介,实现了对汉字起源地的文化回馈。并通过超越国籍的普遍设计,提供一种能够引起共鸣的价值。这是我们在此次设计中所倾注的心意。

 

P.K.G.Tokyo 设计总监 柚山哲平

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